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『でぃす×こみ』第1巻 ゆうきまさみ 【日刊マンガガイド】

2015/01/25


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『でぃす×こみ』第1巻
ゆうきまさみ 小学館 \630+税
(2015年1月9日発売)


ゆうきまさみが新境地のBLに挑戦!?
……というワケではないのだが、知らずに最初だけ読むと「ゆうきまさみにいったい何が?」と困惑必至の本作。

おおまかな内容としては、小学生の頃からプロを目指してマンガを描き続けている女子高生・渡瀬かおるが、あるマンガ賞で大賞を受賞。喜び勇んで授賞式へと向かうが、そこで初めて、まったく描いた覚えがない作品が受賞していたと知って大混乱。それも自分が目指している正統派の少年マンガとはほど遠い、純愛路線のBL風マンガだった!
そしてその犯人(?)、じつはBLというジャンルがあることすら知らずに「ただセツなくも美しい物語」を「俺もやってみるか」と描いた結果、隠れた才能を発揮しまくっちゃった兄・弦太郎だった──というコメディ作品。

やる気が空回りしている妹と、本人が望まない方面で才能を開花させてしまった兄の凸凹コンビというだけでほほえましいが、それに加えてマンガ作りの裏側もさらっと、あるいはグサッと描かれている点でも興味は尽きない。

さらに要注目なのは、毎話の冒頭で劇中作品として描かれる「ゆうきまさみが本気で描いたBL風マンガ」だ。
いつもの作品とは違った雰囲気を出すために、ゆうきまさみが描いた画にほかの作家が着色するという画期的な試みで作られたその短編は、単行本でもカラーで収録されているのがすばらしすぎる!
コラボしているのは、灰原薬、黒丸、室井大資、のりつけ雅春、オノ・ナツメといった納得の面々。

そんな「大人が本気で遊んでる」と言うべき(もちろん、とてつもなく労力を割いているであろうことは言うまでもないことだが)ギミックも楽しみつつ、久しぶりに独特の力の抜けた短編コメディが楽しめるのもうれしいかぎり。
そして、なにげに創作において生きたアドバイスとなることも散りばめられていたりする、いろんな意味で「ありがとう!」と言いたくなるマンガである。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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